ロートの配信(12)
※語り手がミサトに変わります。
誘拐事件のあと、体調を崩した私は昼夜を問わず、自宅で寝てばかりいました。
そんな生活が2日ほど続いた頃、深夜0時にいきなりスマホに電話がかかってきました。
(こんな時間って事は、きっと緊急事態だと思う。親戚で誰か死んだとか)
そう思って慌てて電話に出ました。
「こんばんは。ミサトさんですよね?」
聞き覚えのある声。
たぶんドラネさんでしょう。
「はい」
「こちらドラネ・バタ・シャボリです。深夜に申し訳ございません。緊急の連絡です」
「こんな時間に一体、どうしたのですか?」
「誘拐されたとき、ロート王女が魔法の実験台にされたのは、ご存知ですよね?」
「はい。そのときは寝てましたが、後で異世界警察からそのような説明を受けました」
「…本当に申し訳ないのですが、その際、ロート王女がミサトさんと専属契約する魔法まで、かけられてしまった事が発覚しました」
「そうですか。専属契約とは何ですか?」
「ヴァンパイア が人間と専属契約をすると、
その人の血しか吸えなくなり、2人のうちどちらかが死ぬと双方が死ぬ事となります」
「デメリットだらけの契約に見えますが、メリットはあるのですか?」
「メリットは特にありません。
なのでこのような契約は滅多に結ばれませんが、3件ほど前例が確認されています。
いづれも、人間とヴァンパイアが思想的なつながりを感じ、忠誠の証として専属契約を結んだケースです。
しかし今回の4件目は、ほかの3件とは違い、双方の合意なしに第3者によって無断で結ばれたものです」
「無効には、ならないのですか?」
「無効化するように裁判所に申請中です。無効化が拒否される要素は無いのですが、申請してから承諾されるまで、最短でも1か月はかかります」
「そんな…。勝手にかけられた魔法でも、解除はできないのですか?」
「はい。契約する魔法も、契約解除する魔法も、裁判所の許可なく使用できないシステムとなっております」
「でも、契約する魔法をかけた人…ではなくヴァンパイアは、無断だったんですよね?」
「はい。
容疑者2人は、どちらも違法な犯罪組織に所属しているヴァンパイア です。
異世界警察が容疑者2人に取り調べを行っていたのですが、失踪されてしまいました。
現在、異世界警察とヴァンパイア連邦共和国の警察が、容疑者2人を総力をあげて捜索中です」
私は心のなかで、異世界警察は案外、無能かもしれないと思いました。
「ミサト様には申し訳ないのですが、契約の無効化が認められるまでの1か月間、ロート王女に血を捧げていただけないでしょうか?」
「量にもよりますが…」
「1日100ccです」
「なら問題ありません」
「ありがとうございます。血の受け渡しなどはどのようにいたしましょうか?」
「わざわざ毎日渡しに行くくらいなら、いっそ、ルームメイトとして一緒に住むのもありだと思います。ロート王女さえ良ければ。
実は私も、ヴァンパイア ってどんな存在が、すごく気になるんです」
「それは助かります!今からロート王女に連絡しますね。
本人の同意はおそらく得られるでしょうが、どちらにせよ、結果はまた、床に魔法で文字を浮かべて知らせます。
それでは、失礼します」
通話はここで終わり、私は床に魔法で文字が浮かぶのを楽しみに起きていたかったのですが、すぐに眠ってしまいました。
※この続きは来週書きます。
ぜんぜん関係ない話題となりますが、
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